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言葉を伝える練習帳。


by sumi
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国家の云々

本はよく読むけれど、読むのはもっぱら小説で。
私が一番読まないのが実用書とか新書のたぐいの本。

だから、『国家の品格』という名前の新書がいますごい売れてる、
ということは知ってたけど、全然読む気はなかった。
そんなある日知り合いが読んだらしく、ちょっとその話を聞いた。
その人は、私が大学で文化人類学をやってたのを知っている人で、
「文化人類学やってたんなら読んでみるべきだよ」的なことを言っていた。
で、ちょっとだけ興味を刺激されて翌々日、本屋でさっそく買って読んだ。

多分、読み終えるのに2時間もかからなかった。
でもざざーと流し読みしたわけじゃない。一応、しっかり目を通したつもり。
なんというか、面白い本だなあ、とは思った。

こういう類の、つまり文化やら国家やら社会やらについて論じた文章を読むとき、
私はどうもうがった見方をしてしまうというか、斜に見てしまう癖がある。
それが文化人類学をやったからなのかそうじゃないのか、
いいことなのか悪いことなのかわからないけど、
そういうスタンスで読むので、無論本書に100%賛成など到底できなかった。

大きくこの2つが私にとって減点対象。

○特定の文化や思想、枠組みなどが優れているからといって、
 それは本来他者に押し付けるべきではなく、「使命」とするべきではない
○日本の武士道、神道、(日本に根付いた)儒教的観念の良さについて
 述べられているが、同時に存在する弊害については述べられていない

他にも細かい部分で読みながらいろいろと反発しちゃったので、
そういうのも差し引いてまあ7割がた賛成というところかな…

もちろん日本独特の文化や自然に対する美意識の鋭さに関してはうなずける。
今の時代、論理性・合理性が勝ちすぎていて歪みが出ている、という点も納得。
民主主義や資本主義が最上のものではないという考えもわかるし、
日本独自の良さを再認識すべきだ、というのも、わかる。
でも根本のところ、日本独自の良さを他国に拡げていく、それを
「神聖な使命」であるとはっきり書いているのがどうかと私は思う。
それは思い違いだ。というか思い込みだ。
そもそも、文化や思想そのものやそれを伝えることに、神聖も何もない。

こういう本が出ること自体は別にいいと思う。読むのもいい。
でも、こういう本がベストセラーになってしまうことが問題のような気がする。
なんとなく。まあ、そういう私も読んでるんだけどさ。
でも、読んで、そうだなとかそうじゃないなとか、いろんなことを考えた。
そういう意味ではいい本かも。

ちなみに、私が一番気に入ってるのは、この一文。
「私は、ガーナ人でガーナを愛さない奴がいたらブッ飛ばします。」
これがある意味いちばん素直で正直な気持ちの一文なんじゃないだろうか。
思わず笑ってしまった。
by sumi0313 | 2006-04-11 15:37 | ほんよみ