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言葉を伝える練習帳。


by sumi
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カミュ『異邦人』

本は定期的に読んでるけど、最近はもっぱら古典が多い。
要するにミーハーなんだよね。。

で、久しぶりに読み返してみて、ああ、これはいいな、たまらんなあって思ったのは、
アルベール・カミュの『異邦人』
いわゆる「不条理文学」って言われるものの代表作。
不条理とかって、よくわかんないけど。
新潮文庫の裏にある、説明文は以下の通り。

母の死の翌日海水浴に行き、女と関係を結び、映画をみて笑いころげ、友人の女出入りに関係して人を殺害し、動機について「太陽のせい」と答える。判決は死刑であったが、自分は幸福であると確信し、処刑の日に大勢の見物人が憎悪の叫びをあげて迎えてくれることだけを望む。通常の論理的な一貫性が失われている男ムルソーを主人公に、理性や人間性の不合理を追求したカミュの代表作。


えーと…ストーリーはほんとこの通りなんだけど、この説明文はまずいだろう…ってすごく思った。
内容に、合っているけど、合ってない。
本の中味を、全く何も伝えてない気がする。
これだけ読むと、わけわかんないよね。この主人公やばくね?みたいな。

でも、実際読むと、少なくとも私は、ムルソーに不合理なものを感じなかった。
むしろなんとなく共感できる部分もあって。

彼はべつにやばい男じゃなかった。
彼は論理的に破綻しているからむちゃくちゃな行動をとるんじゃなくて、
彼なりの論理・思考回路にきちんと基づいて行動している。
ただ、その論理・思考が、自分が生きている世界で「普通」と見なされているものからすこしずれているだけで。

「普通」からの逸脱、それゆえに世界は彼を「異邦人」と見なす。
あるいは彼自身、この世界にあって自分は「異邦人」だと思っているのかもしれない。

でもこういうことって、多かれ少なかれ、誰もが感じることなのかなと思った。
自分と世界との間のズレというか、溝というか、違和感って。
だからこの本はずっと読みつがれているんだろうし。
ただ、大勢の人はそのズレを、なんとか取り繕って、自分の住む世界になんとか合わせて生きていくんだろうけれど、ムルソーはそれをしなかった。
自分に、世間に嘘をつかないで行動したから、結果として処刑されることになった。
でも、処刑されることになったからこそ、彼の中に劇的な心理の変化が現れるんだけど…

それにしても、カミュは砂浜とか、砂漠とか、熱いところの描写がうまいなあと思う。
淡々とした語り口で、アルジェリアの砂地の熱さがガンガン伝わってくる。
なので、やっぱり冬よりも夏に読むといいかも!

ちなみにカミュって、タレントのセイン・カミュの親戚らしいよ。
セイン、いいなあ…てかすごいなあ…
by sumi0313 | 2008-08-30 05:12 | ほんよみ