言葉を伝える練習帳。


by sumi
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カテゴリ:詩101題。( 39 )

38/101:番号

地球が生まれてから数えてみて

私は何番目に生まれ
何番目に死ぬのだろう

脈打つ心臓は赤いゼッケン

分厚い心筋の表と裏に刻み付けられた
永い永い数字の連なり

私しか持たない
二つの番号を携えて歩く

私はその番号と番号の間を日毎埋めていきながら
何かを産み出すことができるだろうか
何かを遺すことができるだろうか

あるいは
何も産む必要も
何も遺す必要もないのか?

それでもいつか読んだ
絵本のような戯曲の中で

全ての子どもは何かを携えて産まれてくるのだと
それは良いもの悪いものに限らないけれど…

私は産まれてくる前
順番を待ちながら
あの目の痛くなるほど青い青い部屋の中で
何を考え
何を産み出し
何を遺そうと
永い間を過ごしたのか?

脈打つ心臓は赤いゼッケン

私が持ってきたものを
産み
遺すため
もうしばらくは

私以外の何物をも示さない
この二つの番号を携えて歩く
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by sumi0313 | 2010-01-28 23:22 | 詩101題。

37/101:あさって

黄色い電車の中で
灰色のアンゴラうさぎがうつむいている

運命にむしばまれてうつむいている
伏せた目の上の
まつげが少しふるえている

今日のことも
明日がすぎさり
あさってが来るころには
かすかにやわらぐだろう

私は何もできないけれど
こうやって思うことぐらいしか

今日のことも
明日がすぎさり
あさってが来るころには
かすかにやわらぐといいけれど

勝手にそんなことを祈りながら
窓の外を見る

灰色のアンゴラうさぎは
かすかに目を開いたり閉じたりして
じっとうつむいている

早く電車が着けばいいのに
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by sumi0313 | 2009-01-23 01:29 | 詩101題。

36/101:一度

もうないよ
もう終わりだよ
この一瞬だけだよ

ほら、気がつくと常にいなくなる

一度はもう二度とないんだよ
二度はないから一度なんだよ

それでいて
これからの一瞬は無限に存在しているわけで
常にいなくなるけど 常にこれからを待っている
「一度」はまるで「今」に似ていて
とりとめのない

それでも「今」と違うのは
待ち受けて掴むことができるということ
とめどなく発生し否応なく流され続ける「今」と違って
何かの「一度」は自分で作ることができるということ

「一度」はまるで「今」に似ていて
とりとめはないけれど
それは「機会」と言うこともできるのだろう
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by sumi0313 | 2008-09-28 18:42 | 詩101題。

35/101:いたい

吸いたい
いつものピンクの煙草

買いたい
きらきらひかるまるいもの

会いたい
誰か分からないけど確かあのひと

言いたい
何か、この中にあるもの

いたい
何か、この中にあるもの

痛い
何か、この中にあるもの


いいや別に何も痛くない
怪我していないし
病気もしていない
ときどき自分の外身と中身を結ぶものがぷつぷつ切れるだけ
別に何も痛くない

「痛い」じゃなくて「いたい」と言える
私はこんなにも多くのことを望めるのに

自分のしたいことが分からない奴は馬鹿だ

そんなことを小説の中で誰かが言ってた
私の大好きな話
その通りで
その通りだと思うから
私はまだ大馬鹿で
大好きなその言葉がまだ痛い
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by sumi0313 | 2007-09-27 01:46 | 詩101題。

34/101:夜

幾層にも積み重なった
意識は ぼろぼろめくれはしても
どれもこれも濁った色をしている
湿り気を帯びてもろく はがれては混ざり合い
腐葉土のようで
ただ決してあたたかではない
それは何の豊かさも含まない

何物も生み 育てることのできない土くれに
埋もれてしまいそうな時
一片の白い布を思い出す
白は無垢 白は何も知らない
底の底から音もなく盛り上がり殖えていく腐葉土をそれで覆ってしまえば

なのにすぐにはみ出して

ちいさな白では覆いきれずその裾はめくれよじれていく

急いで直してもまた
強引にぎっちりと覆ってもまた
その白では隠しきれない 消し去れない
冷たくまずしい ぼろぼろの腐葉土はそれを分かっている
それでもなお布は何度もかけ直され
めくられ またかけ直される
かけ直すその手は声をあげて泣いているが
何度も何度も
ぶわぶわと膨れる濁った意識が殖え疲れてねむるまで
何度も何度も
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by sumi0313 | 2007-09-27 01:27 | 詩101題。

33/101:帰る

どこに

それを考えて、随分立ち止まった。

どこにある?

ぼんやり探していたけれど。

どこにある?私の

意味もなく深読みしすぎて。

どこにある?私の帰る

そこがあるのかないのかも、そのうち分からなくなり。

どこにある?私の帰る場所

それを考えて
随分立ち止まって
ぼんやり探して
意味もなく
深読みしすぎて
あるのかないのか
分からなくなり
意味もなく
意味もなく。

意味もなくなり
考えられなくなって
そのうち気が付いて

どこに

山王新宿八竜見附仙台

どこにでもある

天神早稲田十番

どこにでもある 私の

ゴメレス坂やサンケーンの村

どこにでもある 私の帰る

ここ。

どこにでもある 私の帰る場所
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by sumi0313 | 2006-08-29 01:24 | 詩101題。

32/101:顔

鏡の中の自分の顔、いつもたいてい無表情。

たまにしかないけどチークをつける時ちょっと笑ってみる。

不自然。

自分の笑顔は写真で時々見る。

やっぱり笑顔が一番いいのかな?

よくわかんない。

自分では決めないでおこう。



あの時、私はどんな顔してたんだろう?って思う。

あの時、あの時、あの時、あの時、それからあの時。あの時。

私は知らない。

私がどんな顔をして生きているか。



私と一緒にいた人たちしか知らない私の顔。
誰も知らない私の顔。

どっちも、多分、必要、なんだと思う。

意識的に笑う私。
無意識に笑う私。

どっちも、多分、アリ、だと思う。
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by sumi0313 | 2006-04-20 21:22 | 詩101題。

31/101:希望

誰かが言っていた。
それは、持ちうるもの、持つべきものではなくて、
たとえどんなに嫌で、持ちたくなかったとしても、
持たざるをえないものなのだと。
人が生きる限り。

私の知らない時代、
昭和がちょうど3分の1終わった頃、今私がいるこの地が、
焼けた石と土と人でうずまっている中で、
彼はそれを感じたという。
感じたというよりも、知ったというべきか。

私はたまたま彼の考えを知ることができた。
それは良かったのだと思う。
物事の良し悪しはよくわからないけれど、それは本当に良かったのだと思う。

大概の人は、たとえ今この瞬間、それを持てなさそうに思えたとしても、
自分に強いて持とうとするべきである、と言う。
それは正しい考えだろう。

けれど、彼は言っていた。

人間の性質上、どうしてもそれは持たざるをえないものなのだと聞いたとき、
私はそれを正しいと思うより、良かったと思った。
どこか、救われたような気がした。
それを持とうとしなければと思う私の努力や、
自分にそうさせようとする自分への戒めから、
少しだけ解かれた気持ちになった。

前よりもほんの少しだけ安らかな気持ちで、
今この瞬間は持てずとも、
生きている限りいつか必ず湧き上がってこざるをえない希望を、
ゆっくりと、待てば良いのだと思えた。
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by sumi0313 | 2006-03-09 20:38 | 詩101題。

30/101:解凍

誰かがaと言うと、私の心のa'の部分が溶けていく
誰かがbと言うと、私の心のb'の部分が溶けていく
誰かがうんとうなずくと、私の心のどこかが溶けていく
誰かが手を差し伸べると、それに触れた私の心の一部が溶けていく

私はいつも自分で自分の心を冷凍してしまいがちで
冷凍すればもちろんいいこともあればわるいこともあって

でもいつも誰かが溶かしてくれる
わざと自分で凍らせてみたりするところや
自分でも気が付かないまま、かちかちになっていたところを
時に心をこめて
時にとても何気なく

ごくたまに
誰かが私の心を凍らせることもあるけれど
私だってたぶん誰かを凍らせているし
それ以上は誰かを溶かせてやれているのだと思いたい

言葉や身振り手振り
口角の上がり下がり
目のひかり

そういうものでお互いにお互いの心を
日々凍らせて、凍らせあって
日々溶かして、溶かしあって
人間ってそういうものだろうか
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by sumi0313 | 2006-02-25 01:31 | 詩101題。

29/101:言い忘れ

さっき電話していて、話しそびれてしまった。
私たちはもうずっと、冷たい金属的なプラスチックの箱を耳にあてて、
互いに声を伝え、互いに声を聞きあっていた。

なのに、私は君に言い忘れてしまった、
私たちはいずれにしろ動かなければならない、
動き続けていかなければならない
ということを。

私たちはいつだって動いているし、動き続けなければならない、
だって、誰かが言ってた、それが生きることなのだもの。
どんなに動くのが辛くても、でないと生きてなどいけないのだ、残念ながら。

だのに私は言い忘れてしまった。
いくら先が見えなくても、
今がもう見えてしまっているのであれば、
私たちはその時大きく動くべきなのだ。

君の、私の、心の牙が折れてしまわないうちに、大きく。
たとえ遮二無二動いた結果が再び空気を掴んだとしても。
大きく。
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by sumi0313 | 2006-02-08 01:28 | 詩101題。