言葉を伝える練習帳。


by sumi
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the power of book

村上龍の『コインロッカー・ベイビーズ』(上・下)を、久しぶりに読み返した。
高校のとき、友達に借りて初めて読んでから、今回で読むのは3回目。
村上龍の中で、多分、一番大好きな作品だ。

物語は、主人公の二人、キクとハシが、生まれた直後
コインロッカーに捨てられ、奇跡的に生き延びたことが発端になっている。
タイトルの「コインロッカー・ベイビーズ」はまさに二人そのままなのだけれど、
実は決して二人だけではない。

めまぐるしく動く景色や登場人物の鋭い感覚の変化が、
まるで目の前で触れて、見て、嗅いでいるかのように、
リアルに色濃く描かれている。
彼の書く文章は、すごく正直だ。
美しいものは美しいものとして、醜いものは醜いものとして、
思いやりとか倫理観とか全くなしにきっぱり書く。
どうしようもなく救いがないけれど、その潔さが好きだ。

この作品では、今現在この世界では「悪」とされている行為が強く描かれている。
でも私はいつも、この作品を読んでいると、二人の主人公の狂気とも言える
エネルギーに引きずり込まれて、容易にその世界から出られなくなる。
二人がもがいてもがいて、憎しみながら噴出する破壊のエネルギーの強さに、
ひどく憧れを感じる。

初めて読んだときから私はずっと、キクが好きだ。
強くて、硬くて、ぶっきらぼうで、自分の欲しいものは知っているから。
それでも今回読んだら、だいぶハシも好きになった。

人によって評価は分かれるだろうし、
もちろん目をそむけたくなるような嫌なシーンもある。
決してやさしい本ではないから、読み進めて行くのに
ある程度のパワーも必要だと思う。
でも、私も含め、今パワーを持てない人や、生きるのにパワーなんて
たいしていらないだろうと思う人は逆に一度読むといいと思う。
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by sumi0313 | 2006-03-14 11:23 | ほんよみ

31/101:希望

誰かが言っていた。
それは、持ちうるもの、持つべきものではなくて、
たとえどんなに嫌で、持ちたくなかったとしても、
持たざるをえないものなのだと。
人が生きる限り。

私の知らない時代、
昭和がちょうど3分の1終わった頃、今私がいるこの地が、
焼けた石と土と人でうずまっている中で、
彼はそれを感じたという。
感じたというよりも、知ったというべきか。

私はたまたま彼の考えを知ることができた。
それは良かったのだと思う。
物事の良し悪しはよくわからないけれど、それは本当に良かったのだと思う。

大概の人は、たとえ今この瞬間、それを持てなさそうに思えたとしても、
自分に強いて持とうとするべきである、と言う。
それは正しい考えだろう。

けれど、彼は言っていた。

人間の性質上、どうしてもそれは持たざるをえないものなのだと聞いたとき、
私はそれを正しいと思うより、良かったと思った。
どこか、救われたような気がした。
それを持とうとしなければと思う私の努力や、
自分にそうさせようとする自分への戒めから、
少しだけ解かれた気持ちになった。

前よりもほんの少しだけ安らかな気持ちで、
今この瞬間は持てずとも、
生きている限りいつか必ず湧き上がってこざるをえない希望を、
ゆっくりと、待てば良いのだと思えた。
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by sumi0313 | 2006-03-09 20:38 | 詩101題。

貴志祐介って!

ここ数ヶ月間、本はたくさん読んでいる。
でも、ライフログに載せるばかりでなかなか記事にはできてなかったので、
ちょっと今まで読んだものをまた少しずつ紹介していけたらな。。

ということで、今回は珍しく作家単位で取り上げてみようかと。

私のかなり好きな作家のうちの一人、貴志祐介。
ジャンルは一応ホラー?サスペンス?ということになるのかな。
でもそうやってジャンルで区切ってしまうのはもったいないと思うんだけどね。

この人、とにかく細かく取材をおこなって、
非常に論理的で精密な物語を組み立てる。
なんか。。頭いいんだろうなーとすごく思う。
もちろん、頭がいいだけではなくて、文章もきちんとうまい。
エンタテイメントとしては非常に上質な作品を書く人。


『黒い家』
この人の作品で一番有名だと思うけど、
実はこの本、高校のときに一度読んだきりで…
でもとりあえず、私はこの本で貴志祐介を知った。
生身の人間の怖さは他の作品でもいろいろ垣間見れるけど、
この作品が一番全面に出てるかなあと思う。
エレベーターがね、怖かったな。。

『天使の囀(さえず)り』
同じく高校のときに読んで、半分トラウマになった作品。
でも、あれから5年近く経った最近、再び手にとってしまった。。
今まで読んだサスペンス・ホラーの中でもピカイチの怖さと嫌さ。
というか気持ち悪さ。
最初ちょっと読むとオカルティックなサスペンス、という風だけど、
ところがそうはいかない。全然いかない。
一番好き、とはいえないけれど、一番やばいと思う作品はコレ。

『十三番目の人格(ペルソナ)~ISOLA』
これは彼のデビュー作?かな。
他の作品と比べると、テーマ上リアルさにはちょっと欠けてしまうかな…
多重人格の女の人の話。
リアルな恐怖の度合いが上の2冊に比べて低いから、
少しは安心して読めるのでは?と思う。
でも個人的には、ラストに絶句。それはちょっとやだ。。

『クリムゾンの迷宮』
一見SFっぽい(まあ実際SFっぽいとこもある)けど、
物語の後半で、「おお!そういうことだったのか!」と非常に納得。
私は全然物語の先を推測しないで読むタイプなので、
後からどんどん伏線がつながっていくのは読んでてすごい面白い。
怖さは比較的低めなので、わりと薦める側としても薦めやすい作品かも。

『青の炎』
これまた全然違うジャンルの作品。というかジャンルが規定できない気がする。
いわゆる倒叙?というのか、犯人の側から物語が描かれていくタイプ。
全然怖くない作品。むしろ心にくる。。
これも、2回読んだけど、いろんな意味で青いんだなあ…と思う。
主人公は高校生の男の子で、自分も高校生だった時に読んだのと、
大学卒業してから読んだのでは、全然読後感が違ったものでびっくり。


なんとなくの順番で書いたら、だいたい「怖い⇒怖くない」の順番になった。
たまにはホラー・サスペンスを読んでもいいかなという方、ぜひ!
そうでない方も、下から読んでいってみてほしいな。。
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by sumi0313 | 2006-03-04 03:33 | ほんよみ