言葉を伝える練習帳。


by sumi0313
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報い

そろそろ収穫の季節だ
かなしい季節だ

こんなにも育ってしまった
放縦に根を張り
枝葉は伸びるに任せ
ひたすらに

しかし、こいつは紅い実を結ぶのか
奇妙に大きな葉の陰に隠れてちらと見える
まだあおいあの実は
丸く膨れ上がってはいるが
腐っているんじゃないのか
このいびつな有機体は
片輪じゃないのか

一体、
その蔓は
捻れてやしないか

根元からゆがんだまま
こんなにも育ててしまった

そろそろ収穫の季節だ
かなしい季節だ

刈り取ってしまわなければ

春が足踏みしている間に
桜が目を覚ます前に

幸福感と焦燥感の繊維がない交ぜになった
その茎は噛んでみると酷く甘いが
後味は苦くて酸い
このでき損ないを

報いの刃で早く
刈り取ってしまわなければ
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by sumi0313 | 2010-02-24 11:49 | ことばづくり

舟歌

葡萄酒色の海を渡る小さな舟
小さな草の舟

喜怒哀楽の三角波の辺を縁取りながら
血潮を泳ぐ小さな舟
小さな草の舟のような
小さな心

さんざめく波音に
内から沸き上がる揺らめきに
とめどなく
さらされて
やや疲れを覚える小さな櫂の手


大地が欲しかった

足を踏みしめて深呼吸ができる
揺らぐことのない拠るべが
たとえばほんの小さな
砂州であっても構わないから

――いまだ、
見つからない?


もうすぐだろうか
そんな気もする
それともあれは蜃気楼なのか

いまこそここで強く水を掻かなければ
強く強く
歯を食いしばって
下腹に力をこめて
ぎり、と正面を見据えて
ともすれば萎えがちなこの手を叱りつけながら

見えるような見えないような
存在するようなしないような
遠いような近いような
あの白いラインを確認しに

いまこそここで強く掻かなければ
葡萄酒色したこの感情の海を
強く強く

強く
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by sumi0313 | 2010-02-22 01:56 | ことばづくり

燐が宿る

私の胸に燐が宿る

ふとしたはずみで

燐が燃える

言葉ひとつで

私の胸の燐が燃える

そうして私の全体が

精神的にも

物理的にも

熱をもつ



あの時

離れた場所に燐がふたつ

あるんじゃないかと思った

離れていたけど

つながって

小さく燃えるのが見えるような気がした



燐が宿る

私の胸に燐が宿る
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by sumi0313 | 2010-02-11 13:31 | ことばづくり

言葉の力

朝日新聞の天声人語なんか、
ほんと久しぶりにたまたま読んだんだけど。

なんか、ランチタイムは一段落してたけどまだ仕事中で、
なのになんか泣きそうになってしまった。

小さい子供を残して亡くなってしまったお母さんのことを詠んだ歌が載っていた。

 遺児ふたり長き髪もつ明日よりは母に代わりて誰が結ばむ
 (羽場百合子)

なんか…
すごく感情移入というか…

昔、お母さんに毎日髪結んでもらってたなぁって思い出す。
うちは私も含め三人もいるから、毎朝毎朝三人分、
ずーっと結んでくれてたんだなぁって、改めて。
ポニーテールだったり、半分に分けてみつあみだったり。

気持ちの内訳は多分それだけじゃないんだけど、
でもなんだかぐっときて、
久しぶりに涙が出そうになった。

あと、最後の部分にお母さんが亡くなる前に子供に残したメモが紹介されていて。
私はなんか、そういうのに弱い。

作り物じゃない、100%本当の言葉しか詰まっていないから。

それはすごくシンプルで平凡な言葉の連なりかもしれない。
でもこれ以上ないほど、
だってもうこの先はないのだから、
相手への思いが強く強く込められているのが感じられて、
胸を打たれてしょうがない。

なんか思いがけなくエモーショナルになってしまった月曜の昼。
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by sumi0313 | 2010-02-08 19:11 | ひびおもう

2月1日

地下鉄の階段を上がると

あいねず色にひかる雲と
冷たい空気に後押しされて
ようやくやって来た白い夜

ずいぶん待ちわびていた
ずっと待ち焦がれていた

私が育った街のように
音もなくすべてが埋めつくされていく白い夜が

この街にも降りしきるのを

言葉少なに
足早に
傘を差して帰る人たち

寒さにぎりりと締め付けられて
落ちてくる結晶に少しずつ何かを奪われながら

それでも私はうれしくて
なつかしくて
いとおしくて

暗闇から無数に生まれてくる
白いひとひらを見上げる
その瞬間
私の口角は
おそらくほんの少し上がっている

やっと出会えた

少しの間だろうけど
私を冷たくやさしく埋めつくして
このゆがんだ視界を
すぐに汚れる白で覆いつくして
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by sumi0313 | 2010-02-01 22:25 | ことばづくり