言葉を伝える練習帳。


by sumi
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green eyes

10月最後の曇りの日。

ちょうど目の高さほどのコンクリ塀の上に、綺麗な緑色。
かまきりが凝っとしていた。

何となく興味がわいて指先でつついてみると、
彼もしくは彼女はおもむろに顔だけこちらに向けた。

多分ほんの少しのあいだ。

かまきりは逃げるでもなく飛びかかるわけでもなく、私をただ見ていた。
私もかまきりの、身体と同じ若草色の複眼をのぞき込んだ。

その瞬間、全く異なる有機体が、同じ視線の高さで互いの存在を認識していた。
なんだか少し不思議な感じがした。

顔を戻し、それきりもうあまり動く気配のないかまきりに別れを告げ、恋人の家へ向かう。

季節外れの夏の虫。
おそらくはこのめちゃくちゃな気候のせいで、
生まれるタイミングが狂ってしまったのだろう。
こんな時期では、もう相手も見つからない。

彼もしくは彼女は、戸惑っていたにちがいない。
寒くて寒くて、仲間も見つからなくて、
灰色のコンクリ塀の上でこれからどうしたらいいのか分からなくて、
もう一歩も動けなかったんじゃないか、

そんな変なイメージが沸いてくる。

最早ぎらぎらと太陽が照りつけることのないこの世界は、
その眼にどう映ったのだろう。

のっぺりとしてかすかに光沢のある若草色に、針で刺した痕のような黒点が一つ。
あの複眼は、悲しみや寂莫を無数に増幅してしまいやしないだろうか?

それが少し気になった。
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by sumi0313 | 2010-11-02 01:30 | ひびおもう