言葉を伝える練習帳。


by sumi
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【詩】春一番

いまだ冷たき 名ばかりの
春一番ぞ 吹き荒れる
雲、人、私、陽射し、いま
みな流されて 空白の
午後三時半 東京は
何も残らず そこに在り



短い短い定形詩。
定形詩書くのは、高校生ぶり?
久しぶりに書いたものの、どうしても形を整えることが先に来てしまって、
言いたいことをそのまま言えないし、余計なものがくっつきすぎるような気がする。
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# by sumi0313 | 2017-02-07 16:57 | ことばづくり

【短歌】2016年 秋

あさり食(は)み はからずもじゃり、と噛み締めて
彼の郷里の海の香を知る

天気図に暦に街に胸中に台風重ね空高まりつ

今はまだきらきらと日々生きてゆく力足りずに自転車を漕ぐ

なに一つ思うままならずわたくしの髪も口も心も子宮も

ことだまのわが胸中に入り込みあたたかく占むる猫のごとくに

かくも水を含んだ空気はやさしくて
もやけぶる夜にいだかれ帰る

近づくと離れゆくとは星月や波や振り子や人のことわり

くたびれた水晶体を透過する月は確かに綺麗だけれど

生きるとは他者を殺して生きること
かまきり轢きて何を今さら

むくつけき生きもの抱いていたずらに酒を遣る遣るやりきれなくて
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# by sumi0313 | 2017-02-01 16:25 | ことばづくり

【詩】自転車

坂道の途中
寒い冬の夜遅いころ
ぶちん、と音を立て
ブレーキのワイヤがこの世を離れた

とうから気づいていた
錆にまみれたからだ
ぎぎぎと鳴くそこかしこ
壊れたりなくなったりした部品たち
すべてがぼろぼろの私の自転車

新しい自転車を買った
考えた末の考えなしのように
消去法で選んだような自転車
しいて言えば橙の色が目に付いたくらいか

ぼろぼろの死骸は店員に引き取られた

私はなぜか
10年乗っていたその馴れたハンドルではなく
別のハンドルを手にしていることが不思議でならなかった
新しい自転車を買ったのは私なのに
壊れた自転車を引き取ってもらって五百円をもらったのは私なのに

新しい橙色の自転車は
前のものよりハンドルが少し高いようだった
少し乗りづらいと感じた
だけどそれも馴れるだろう

ともに長く時を過ごしたものは
ともにのちの時を過ごせなくなったとき
自分の輪郭が崩れたような気がしてしまう
何の気なしに乗っていた自転車が
不具合だらけであったとしても
ぴったりとして私の生きる形の一部になっていたことを知る

それでもこれから今しばらくは
橙色の自転車と生きる
私が選んだのだから
この少しハンドルの高い自転車も
きっと私の形になる

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# by sumi0313 | 2017-01-25 02:26 | ことばづくり

【短歌】2016年 夏

雨あがり道路にえがく自転車のシークエンスは唯一無二の

おのが色の鮮やかなこと知らぬのかラベンダーの中の紋白

夏至去りて盛夏迎えるこの星を取り巻くすてきなタイムラグかな

濃紺にふつか月ありその端にぷつり指先刺してみたくなる

唐突にあおむらさきの朝顔の塀より覗き夏、とささやく

ゆくりなく海行きたしと思へどもすぐ飛び立てぬ鳥の如くには

まろき月見上げる我の欠損をひとときやさしく補いたりし

ほとばしる蝉の吶喊(とっかん)、放縦にこの肉体を侵せよ、侵せよ

名も知らぬ山の端あかく色づきて陽は我を刺し郷里近づく
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# by sumi0313 | 2017-01-16 16:34 | ことばづくり

【短歌】2016年 春

春の雨心定まらぬこの身撃つ
それがどうした、濡れるくらい

知らぬ道で可憐な黄色「カロライナジャスミン」胸にしまう花の名

千切りのキャベツのなぐさめるようなやさしいみどりふと目にしみる

春になりてコンクリートの隙間から蕾生まれし場所選ばずに

足早に通りすぎたる朱鷺色の季節惜しまず花弁降る夜

心中のエントロピーの増大を知りつつも打ち遣りし、今日も

きらきらと軌跡遺してなめくじの命尽きたる坂の途中で

風光るいつかの春に去りし人の教えてくれたニール・ヤング聞く

さきさきと水菜の茎を噛む音はがらんどうの体内に響き

堪えがたく風やわらかき真昼間に涙落として次の日は雨

「ありがとう」を免罪符にして誰かまた自分の欲望押し通すのでしょう

オリーブの実を結ぶこと無いと知るつぼみつけども花咲かせども

いつもなら一人で走る帰り道を二人で歩く
自転車は降りて

いっときの甘味あじわう夜明け前降らむとす雨よ今しばらくは

風呂上がり髪乾かしていたらこの身に沸き上がる退廃、の文字

一枚の幻灯のようなおぼろ月
総てが作り物に思う真夜中

みずっぽい醤油の海に漂える豆腐のかけら休日も終わり

しあわせのため息ついて本能は夜の深間に生まれて消える
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# by sumi0313 | 2017-01-16 16:17 | ことばづくり