言葉を伝える練習帳。


by sumi
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【詩】自転車

坂道の途中
寒い冬の夜遅いころ
ぶちん、と音を立て
ブレーキのワイヤがこの世を離れた

とうから気づいていた
錆にまみれたからだ
ぎぎぎと鳴くそこかしこ
壊れたりなくなったりした部品たち
すべてがぼろぼろの私の自転車

新しい自転車を買った
考えた末の考えなしのように
消去法で選んだような自転車
しいて言えば橙の色が目に付いたくらいか

ぼろぼろの死骸は店員に引き取られた

私はなぜか
10年乗っていたその馴れたハンドルではなく
別のハンドルを手にしていることが不思議でならなかった
新しい自転車を買ったのは私なのに
壊れた自転車を引き取ってもらって五百円をもらったのは私なのに

新しい橙色の自転車は
前のものよりハンドルが少し高いようだった
少し乗りづらいと感じた
だけどそれも馴れるだろう

ともに長く時を過ごしたものは
ともにのちの時を過ごせなくなったとき
自分の輪郭が崩れたような気がしてしまう
何の気なしに乗っていた自転車が
不具合だらけであったとしても
ぴったりとして私の生きる形の一部になっていたことを知る

それでもこれから今しばらくは
橙色の自転車と生きる
私が選んだのだから
この少しハンドルの高い自転車も
きっと私の形になる

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by sumi0313 | 2017-01-25 02:26 | ことばづくり